【エンディング産業展2019セミナー】他社との競合に負けない「勝ち残る石材店」になる方法~なぜ今“顧客満足”が必要なのか?~ 講師:㈱第一石材 代表取締役 能島孝志
2019年8月20日(火)~22日(木)に、東京ビッグサイトで開催された「エンディング産業展2019/第3回メモリアルストーンショー 」において、私、能島孝志が”他社との競合に負けない「勝ち残る石材店」になる方法~なぜ今“顧客満足”が必要なのか?~”というテーマでセミナーを担当させていただきました。
おかげさまで、93名(定員:100名)という、たくさんの方々にご来場いただき、大盛況のセミナーとなりました。
その、セミナーの内容が、供養業界のためのビジネス誌「月刊仏事」(株式会社鎌倉新書)に取材掲載されました。
今回の記事は、その掲載内容をすべて原文にてご紹介させていただきます。
目次
リード
能島孝志(のじま・たかし)氏は金融機関に勤めた後、コンサルティング会社に転職。
当初、飲食店が専門分野だったが、突然、石材店を担当することに。
業界の常識をまったく知らないコンサルタントは、ビジネスの在り方を業者主体から顧客主体に転換しないと道は開けないと感じた。
そして「なぜ、お墓の形はどれも同じでなくてはならないのか?」との疑問から、画期的なデザイン墓石を開発。
市場で成功を納め、1995年、神戸市兵庫区で有限会社第一石材を開業した。
現在、同社は、営業マンもチラシも一切なし、すべてインターネットで注文を受けるという、独自のスタイルで成長を続けている。
今回のセミナーでは、業界で勝ち残る方法を「圧倒的差別化ツール」「徹底した顧客満足(CS)」という二つのキーワードから受講者に伝えた。
「暑くないですか?」:顧客ファーストの意識
猛暑が続く中で行われたこのセミナー。
もちろん会場内は冷房が効いているが、能島氏は満席の受講者に向かって、まず「暑くないですか?」と尋ねる。
「皆さんのお店や会社にお客様が来られたら、まず暑くないか、あるいは寒くないか訊いてください。温度設定は大事です。」と話す。
仕事は客の状態・状況に注意を払うことから始まる、という暗喩的なメッセージだ。
「顧客満足を重視した商売は、まず人…お客様の要望をとことん聞き、次にモノ…その要望に合った製品とサービスを提供する。その結果としてお金…利益が生まれます。この順番を間違えてはいけない」と能島氏は力説する。
それは簡単にお墓が売れた昭和の時代の名残で、この業界には顧客ファーストという意識が未だ希薄だということを意味している。
「お墓はこんなもの」という古い常識を捨てないと、現在の消費者には振り向いてもらえない。
現場から漏れてくる「最近の客は面倒くさい」「最近は安物しか売れない」といった不満の声にも警鐘を鳴らす。
防水墓誕生のストーリー
およそ30年前、デザイン墓石でムーブメントを巻き起こし、15年前は他社に先んじて、お墓の地震対策を導入した第一石材だが、現在の主力商品は “納骨室に水が入らないお墓”『信頼棺®』だ。
それは一人の客からの、(当時の石材業界では)思いもかけない注文から生まれたと言う。
「納骨室に水が入らない墓が欲しい」…ある一人のお客からそんな相談が持ち込まれたのは7年前、2012年のことだった。
父が亡くなったのでお墓を建てたいというその男性は、接客した能島氏に母の話をした。
「母が実家のお墓の納骨に立ち会った時、中にお骨がプカプカ浮いていたそうです。その光景があまりにショッキングで頭から離れない。夫の墓はそんな墓にしてくれるなと言われています」
彼はそうした母の切なる願いを叶えたいと、あちこち石材店に尋ねて回っていたのだ。
その話を聞いた能島氏は「屋外にあるのだから、雨が降れば水が入るのは構造上、しかたがありません」と答えた。
すると静かだった男性は突如として憤激して言い放った。
「どこの石材店も同じことを言いよる。あんたらの業界はお客が困っていても、こういうところが不便やと言っても、何とか改善しようとすらせえへん。お墓は水が入るもんや、そんなこと当たり前やないか。我慢せなあかん。自分たちはこれでずっとやってきた、作業もしやすい。って、お客の希望を二の次にして、それで商売してますと言えるんかい!」
圧倒的差別化ツールを持つ
厳しい叱責を受けたが、能島氏はその男性に貴重な課題をもらうことができたと言う。
こうして第一石材は試行錯誤を重ねて、“納骨室に水が入らないお墓”『信頼棺®』を生み出した。
特許登録構造を得た、同社ならではのオリジナル製品である。
能島氏は他社が開発したオリジナル製品もいくつか挙げ、客に選ばれ、勝ち残る石材店になるためには、こうした「圧倒的差別化ツール」が必要と説く。
もちろん自分たちで開発すればベストだが、既存製品をうまく採り入れて自社の商品として販売するのも一つの手だ。
実際、第一石材では一都道府県2店限定で『信頼棺®』を販売するフランチャイズ加盟店を募集している。
顧客満足=CS
第2のキーワードは顧客満足=CS(Customer Satisfaction)。
客に満足してもらうための仕組みづくりである。
2015年度の国民生活センターによる冠婚葬祭業のトラブルの中で、お墓に関するトラブルは年間1192件に上る。
これは葬儀の617件、仏壇の608件に比べて約2倍の件数だ。
しかもこの数字は相談に来た人の数であり、「菩提寺と提携している石屋さんだからしかたない」といった事情から、不満があっても口にしない人はもっとずっと多いはず、と能島氏は分析する。
不満はそのままで終わるかというと、そうではない。口コミで拡散されてしまうのだ。
現代はブログ、SNSなどを使って一般人でも自由に情報発信できる時代。
「あの石材店はひどい」といった不満の口コミが広がれば、その影響は甚大である。
しかし、インターネットだけで営業をする第一石材では、こうした口コミの影響力を、逆に自社の信頼性強化のために活用している。
ホームページ上で「お客様の声」として、高い評価・ほめ言葉だけでなく、不満の声・クレームの類も積極的に募集し、投稿されたものは逐一公開している。
これは顧客満足の「見える化」の一環でもある。
CSの「見える化」事業
顧客満足は見えにくいものなので、「見える化」する作業が必要になってくる。
ここで能島氏は会社とは別に、最大の石材関連業界団体である一般社団法人 日本石材産業協会の顧客満足推進委員会の事業について説明。
同委員会で製作し、一都道府県2店限定で提供しているオリジナルニュースレター「いしずえ」などを紹介した。
石材店ではお墓という商品の特性上、一度関わった既存の顧客と再会するまでには長い時間を要する。
次回は10年後、20年後ということが普通だろう、しかも相手は代替わりしているかもしれない。
何もしなければ店と客との関係は途絶えてしまう可能性も高い。
「いしずえ」はそうした長期にわたる、石材店とその顧客との絆を深める営業ツールなのだ。
大半の記事は同委員会の編集メンバーで用意するが、希望があればそれぞれの石材店のイベントや情報などのオリジナル記事も挿入できる。
コストシミュレーションをすると。既存客1人当たりの年間コストは約485円。
10年間送り続けると4,850円。10年の間にこの既存客が4,850円の利益をもたらす可能性は高いのでは?というのが能島氏の提案だ。
もちろん、見込み客、新規の顧客とのコミュニケーションにも有効利用できる。
この他、石産協・顧客満足推進委員会ではオリジナル年賀はがき、各種お礼はがきセットも用意しており、契約店の絆づくり・営業活動を支援している。
今日からすぐに実践できる3つのCS
「セミナーを聴いて、それだけで終わったら何の意味もありません。役に立つと思うノウハウがあれば、すぐに実践しましょう」。
そう呼びかけた能島氏は、最後に今日からすぐに実践できる3つのCSを挙げた。
- 「お客様の姿が見えなくなるまでお見送り」…特に車の場合は、客側にも見送る姿がルームミラーで見えているので、最後まで気を抜かず頭を下げ続ける。
- 「郵便物はすべて記念切手」を使用…季節や相手(性別・年齢など)に合わせて、色合いや図柄を選ぶ。
- 「電話の受話器は静かにおろす」…無造作に受話器を下ろすと、その音が相手の耳に不愉快な音響となって残る。
これらは顧客に対して繊細な対応が求められる葬儀社などでは習慣化されている。
しかし、石材店ではまだまだ十分に浸透していないのが現状だ。
今回は「勝ち残る石材店になる方法」の講演だったが、特にCSについては競合店問題よりもさらに怖ろしい、激増中の「墓じまい」に対抗していくためにも、業界全体で取り組まなくてはいけない課題だろう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
中には、「新参者のくせに高い所から偉そうなことを言いやがって!」と、思われた方もいることでしょう。
しかし、他社との競合に負けるということは、そのお客様に二度とお墓を売るチャンスがないということなのです。
飲食店なら、「久しぶりにあの店に行こうか」なんてこともあり得ますが、お墓の建て替えは数十年から100年以上先のことです。
そう考えると、「勝ち残る石材店」になるためには、他社との競合に負けないことが絶対条件となるのです。
最安値で競合に勝ったところで、何の意味もありません。
どうせなら、最高値で競合に勝ってみませんか!
「信頼棺®」フランチャイズ加盟店本部では、「他社との競合に負けたくない」という石材店を応援しています。