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石材店の現状

衰退を招く石材店のあり方

葬儀の簡略化に始まり、墓じまいや散骨など、お墓を建てる人の絶対数は年々減少。その影響で、小売り石材店の廃業だけにとどまらず、国内の加工業者や採石業者の廃業も増えています。

なぜこんなことが起きるようになったのでしょうか?

その大きな原因は、私たち石材店のこれまでの商売の仕方にあったように思います。

まったくの異業種から石材業界に入ってきた私は、この業界が常識としてきたことの“非常識さ”に、当初は戸惑いの連続でした。

そのくらい、石材業界は我が道を歩き続け、今となっては時代の流れからも取り残された慣例の中にいると感じています。

多くの業者が、長くこの業界に携わっているからこそ見えなくなってしまっている様々な問題について、ここであらためて言及してみたいと思います。

 

創意工夫・営業努力の方法がわからない

これまで長い間、「人が亡くなるとお墓を建てるのが当たり前」という時代が続きました。

かつては消費者が得られる情報量も限られていたため、競合他社と顧客の取り合いになるという懸念もなく、石材業界はたいした努力をせずとも仕事にありつけていました。

この状況に、ほとんどの石材店が完全に“あぐらをかいていた”ように思います。

お客様の悩み、お客様の要望、こうした声に耳を傾けることをせず、その結果、なんの創意工夫も営業努力もなく、ただただ引き受けた仕事をこなしてきました。

それに加え、お墓は車や家電のように同じ顧客からの買い替え需要が少ないので、販売後のクレーム対応やアフターサービスに頭を悩ませる必要もありません。

言葉は悪いですが、いわゆる「売り逃げ」を続けてきたのです。

 

しかし、時代は流れ、私たちを取り巻く環境は大きく変わりました。

今ではお墓を建てる以外の選択肢も数多くある中で、消費者がわざわざこんな「売り逃げ」の生産者を選ぶ必要がなくなったのです。

 

中にはそれに気がつき、危機感を覚えている業者もいることでしょう。ところが、これまで長く続けてきた習慣や考え方は、そう簡単には変えられません。

  • お客様の気持ちに寄り添い、ニーズを探る方法
  • お客様に喜んでいただけるような新しいアイデア

これらは一朝一夕で得られるものではなく、継続して取り組むことで少しずつ見えてくるもの。
こうした努力をしたことも、考えたこともなかった石材業者にとっては、実際にどのように行動を変えてゆくべきかがわからないのです。

 

新たなチャレンジはしない、とことん保守的

新しいサービスや商品、技術が生まれることで、その業界全体が活気づくことがあります。しかし、石材業界に限っては、なかなかそうした新製品が生まれにくい環境にありました。

その理由の一つは、先ほどお伝えした通り、お客様の声をないがしろにしてきたこと。

消費者に喜ばれるモノは、消費者の不満や悩みから生まれることが圧倒的に多いです。ですから、お客様の声は、新たなビジネスのヒントとも言える重要な情報。それを、私たちはことごとく取りこぼしてきました。

 

また、景気の良かった時代にひと財産を築いている石材店は、所有している賃貸マンションの家賃や、長いお付き合いのお客様から追加の戒名彫りをいただくなどの収入があります。

そのため、たとえお墓が売れなくても、また、リスクを負って新たなチャレンジをせずとも、正直、生活には困らなかったのです。

 

こうした保守的で不変的なサービス提供を続けてきたことが、現在の厳しい価格競争を招く一因になりました。

「商品にこれといった差がない。それなら安いほうがいい」

この消費者の考えはごもっともですよね。

 

本来はこうなる前に、値段以外の価値の提供を模索し、差別化を図り、選んでいただける企業となる努力をすべきだったのではないでしょうか。

価格で勝負するのは簡単なことです。だからこそ、一番最後までやってはいけない、禁断の手段だと私は思います。

 

会社である以上、常に進化し、発展し続けなければ、存在できなくなるのは当然のこと。

保守的な姿勢を続けることで、結局は自社の経営を苦しめてしまっているのです。

 

追い討ちをかける中国加工工場の減少

価格競争が起こるのと並行し、平成初頭から始まった墓石の中国加工。

最盛期(15年ほど前)には、2,000とも3,000とも言われた中国福建省内にあった石材加工工場は、今では日本向けの工場が200足らずまで減少しています。

「出典:平成29年11月25日 日本石材工業新聞」

「出典:平成29年11月25日 日本石材工業新聞」

 

この十数年の間に、中国経済は大きな成長をとげ、今では日本を抜いて世界第二位の経済大国となりました。

こうした経済成長を支えた中国国民ですが、特性として“新たに儲かる可能性がある商売には果敢に挑戦する”という気質があります。

商売上手な中国人にとって、長く続けてきた自身の商売を守るという考えはあまりありません。採算が合わない、儲けが少ないと思えば、あっさりと転業します。

福建省の石材加工工場の減少は、こうした国民性の表れとも言えるでしょう。

 

このままの状態が進めば、いつかは日本向けの中国加工墓石がなくなるかもしれません。

事実、中国加工が主流となる以前は、物価の安さから、韓国の工場で加工が行われていました。しかし、ソウルオリンピックを機に韓国の物価が急騰。その後、日本向けの石材加工工場は完全消滅したと言われています。

 

私たち石材店は、「国内で加工するより安い」という理由で中国の工場を利用しています。お客様に少しでも低価格で購入していただくためです。

しかし、もし中国で加工ができなくなってしまったら、激安をウリにしている石材店はどうするつもりなのでしょうか?

価格だけに依存することには大きなリスクがともないます。安易な気持ちで価格競争に飛び込むことで、自ら、景気動向に大きく影響される企業となっているのです。

 

情報化社会における消費者の変化


また、石材業界の現状を考えるうえで無視できないのが、消費者の変化です。

これまで、限られた情報しか持たず、選択肢が少なかった消費者は、文字通り“良いお客様”ばかり。

知識が乏しいので、専門家である石材店がいくらでも言いくるめることができ、比較検討をしないので、言い値でお墓が売れていました。

 

しかし、インターネットが普及した今、上記のようなごまかしはまったく通用せず、こうした対応をする業者は簡単に信頼を失うようになりました。そして、その悪評は瞬く間に消費者間で口コミの情報として共有されます。

 

私たち石材店は、そろそろ「消費者は何も知らない」という先入観を捨てなければいけません。

それどころか、今まで以上に自身の仕事を極める努力をしていかないと、専門家として認めてもらえなくなることでしょう。

 

ここでは、情報化社会において、消費者がどのように変化しているのかをまとめます。

 

「お墓はどれも同じ」はいつまで続く?

ひと昔前、消費者にとってのお墓は、どれも同じようなものでした。

石の違いや加工・施工の良し悪しも極めて判断が難しく、和型墓石のようにある程度形が決まっているものは、外観上も大きな違いを感じられません。

強いていえば、デザイン墓石なら違うということがわかる、というくらいでしょうか。

 

そして、お墓は常に身近に置いておくようなものでもなく、そもそもが“石”なので、よほどのことがない限り、高品質でなければいけないという考えには至らなかったはずです。

そうなると、「お墓はどれも同じ、それなら安いほうがいいだろう」という価値観を持たれることにも納得します。

 

石材業界の価格競争は、保守的な石材店の姿勢と、消費者のこの価値観によって、今なおますます拍車がかかっています。

しかし、個人的には、この状況はさらに少しずつ変わっていくような気がしています。

なぜなら、今はインターネットによる情報が溢れている時代。個人の価値観が、その情報量に大きく左右されると考えられるからです。

 

たとえば、お客様からとてもめずらしい石でのお墓づくりを相談されたり、特殊なデザインの墓石を依頼されたりして、プロである私たちも驚いた、というような経験はありませんか?

お墓づくりを真剣に考えている消費者ほど、よく調べ、学んでいるのです。

 

お墓は安い買い物ではありません。だからこそ、この先も、消費者は私たちの元を訪れる前に、入念な情報収集を行うことでしょう。

「お墓はどれも同じ。だからどこで買ってもいい」ではなく、「こういうお墓がつくりたい。だからこの石材店にまかせたい」

近い将来、こんな風に業者を選ぶ方も増えてくることでしょう。

 

顕在化、多様化するニーズ

消費者は、今まで知らなかったことや、より詳しい知識を得ることで、自身の価値観を明確にできるようになります。

つまり、これまでは表に出てこなかったようなニーズも顕在化し、さらに多様化していくと考えられます。

 

たとえば、

「中国の石よりもインドの石のほうが良いみたいだから、インドの石のお墓にしたい」
「地震でお墓が倒れると大変らしいから、免震・耐震のお墓を探そう」
「納骨室には水が入るって聞いたけど、防水にできないか相談したい」

 

こうした要望を持って石材店を訪れる消費者が最近増えていると思いませんか?

石材店の中には「最近の消費者は細かい、難しい要望が多い、めんどくさい」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。

実は、私たちが気づかないうちに、消費者側が変化していたからなのです。

 

これまでのように「安ければ安いに越したことはない」と思う消費者もいれば、一方で自らの要望に沿う良いものを見極め、そこに費用がかかることを理解してくださる方も出てくることでしょう。

そして、消費者は自身のニーズをより満たしてくれる業者を選び始めます。

 

望んでいるサービスがないなら、ある会社を探せばいい。

それを可能にしているのがインターネットです。

 

今後、私たち業者に必要なことは、多様化するニーズの一つ一つを把握し、それに合わせて柔軟にサービスを用意していこうという姿勢です。

今までと同じように、来るもの拒まずで“受け身”の商売を続けていると、そのうち「そもそもお客様が来ない」という事態に陥る可能性が高いと考えられるのです。

 

信頼できるのは専門家だけ

インターネットなどで情報収集をされた方の中には、ときには、誤った知識をお持ちの方もいらっしゃいますよね。

お客様のミスを指摘するのは失礼な気もしますが、実際に間違った情報はお客様の不利益にもつながります。

ですから、私自身は丁寧に訂正し、「それは違いますよ」と教えてあげるようにしています。

すると、不思議なことに、ほとんどの方が喜んで話を聞いてくださる印象があります。

 

これはきっと、真剣に勉強されたお客様ほど、素人でも得られる情報ではなく、プロならではの知識にとても価値を感じられるからだと思います。

 

そもそも、お客様が事前に情報収集をするのは、不安だから。

  • 「何も知らないのをいいことに、騙されるんじゃないか」
  • 「言いくるめられて、適当にあしらわれるんじゃないか」
  • 「契約後、後悔したくない」

こんな気持ちを抱えています。

 

ですから、私たちのような業者が、指摘しにくい誤りを訂正したり、良い情報だけでなく悪いことも包み隠さずお伝えしたりすると、「この人は敵ではない」とお客様は一気に安心してくださるのです。

そしてさらに、インターネットでは調べられないような、より専門的な知識や情報をお知らせすることで、私たちを本当の専門家として認め、信頼してくれるようになります。

 

このように自発的に動かれているお客様に対して、無理に何かを売り込む必要はありません。

私たちがすべきことは、こうしたお客様たちが「納得できる判断を下すための正しい情報を、専門家として伝える」だけで良いのです。

 

だからこそ、私たちは自身の仕事についてこれまで以上に研究し、極め、自信と誇りを持ってお客様に向き合わなければいけない、ということになるわけです。

 

今後、取り組むべき課題とは

いかがでしょうか。

石材業界と消費者の現状と抱えている問題を考えると、このままではいけないという気持ちになりませんか?

 

インターネットが普及したことによって、世の中は急激に変わりました。

そんな中、あらためてこの業界のスタイルを振り返ると、なんとも時代遅れなことをしているな、と感じることでしょう。

 

私は、この業界に圧倒的に足りていないのは「お客様目線」だと感じています。

 

逆に言えば、お客様の立場に立って商売ができるようになれば、多くの問題は少しずつ解決していけるようにも思うのです。

次は、「お客様目線」のヒントとなる、お客様の本音についてお話します。